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AIが塗装を変える、ティーチングレス時代へ2

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佐々木社長 インタビュー掲載記事 コーティングジャーナル2025.3.5号掲載

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佐々木社長(左)近藤社長(右) 
AIが塗装を変える、ティーチングレス時代へ
タクボエンジニアリング 代表取締役 佐々木栄治氏

AIが塗装を変える、ティーチングレス時代へ1からの つづき

 ——貴社においては武蔵塗料との協業がその一例ですね。
 「両社で開発したインジウムコーティングシステムの展開においては、現在、当社と武蔵塗料、アネスト岩田の3社で実用化に向けた準備を進めています。既に本採用を前提に検討を進めている案件もあり、用途拡大に期待が高まってきました」

 ——どこに需要を見出していくことになるのでしょうか。
 「大きくは金属調意匠が求められるメッキ、蒸着メッキの代替提案としての領域です。インジウムコーティングは400nmの膜厚で制御するため、メッキや蒸着メッキと比べて安価に加飾できるのが最大のメリットです。高い輝度感を求めるラグジュアリーな領域を除き、汎用製品においては、メッキレベルのスペックを要さない用途も多くあり、量的拡大も期待されます。潜在需要の掘り起こしと、また更にマーケティングも施して、ランニングコストを抑えられる新加飾方法としての成長に期待しています。アドバタイジング(広報普及活動)ももっと進化させていきます」

 ——課題はありますか。
 「あとは、それぞれのお客様が持っている塗料物性規格の対応ですね。これについては、武蔵塗料の技術陣が対応し、1つずつ順調にスペックをクリアしている段階です」

 ——膜厚20μmを均一に塗布する塗装技術『Rの技術』と塗料技術の融合によって新たな需要を生み出した事例ですね。
 「今回は武蔵塗料との協業によって実現したプロジェクトになりましたが、見方を変えれば需要側も塗料と設備の一体提案を求めています。塗料メーカーからの相談も多くありますが、いくら画期的な塗料を開発してもそれを塗る設備がなければ、需要側は採用しませんからね。言い換えれば、今まで通りの塗料単体、設備単体での提案は、限界を迎えているとも言えます」

 ——それでも佐々木社長においては塗装技術の革新には塗料の進化が不可欠だと訴えています。塗装を取り巻く閉塞感は、塗料にも一因があるのでしょうか。
 「ユーザーがクレームや要望を出さない限り、新しいものを出す必要がないという体質が革新を遅らせている要因にあると見ています。塗料メーカーにとっても同じ塗料を安定的に供給する方が楽ですからね。実際、30年前から同じ塗料を使い続けているというユーザーも少なくありません。また最近、若い塗料技術者と対話するケースが増えているのですが、彼らが一同に声を揃えるのが、ユーザーからの要望が減り、何をすれば良いのか分からないと言うのです。現行の塗料に不満がないことの現れですが、技術者にとっては不安が募ります」

 ——塗料メーカーにとっては由々しき問題ですね。
 「先ほどUV塗料について触れましたが、アメリカではリチウムイオン電池のカバーを粉体UVで塗っています。国内ではごくわずかな量にとどまっている粉体UVが海外では伸長している現実があります。我々として注視しなければならないのは、こうしたリチウムイオン電池のような最先端分野の製品にきちんと介在できている塗料技術と需要があるということです。今後、成長が期待される半導体産業もしかり、最先端の分野に介在しなければ、産業として生き残ることができません。環境対策として熱負荷低減に対する技術ニーズが高まっている今、このまま現状を踏襲するだけでは、他の加飾技術に取って替わられるままになってしまいます」

 ——業界全体で危機感を共有しなければなりませんね。
 「塗料・塗装産業の活性化については、やはり塗料メーカーが鍵を握っている気がします。塗料メーカーが積極的に新製品を開発し、顧客に採用を訴えていく。それに対し、需要家が魅力を感じ、設備を含めて投資をしていく。このサイクルを再び目指していくべきだと考えます」

 ——何度も繰り返しになりますが、塗料と設備の融合ですね。
 「過去、大手塗料メーカーが設備事業を積極化してきた時代がありましたが、もう一度取り組みを強化しても面白いと思っています。その際、設備を売るという発想ではなく、塗料代に少しオンして、設備をサービスする発想でしょうか。ビジネスモデルを大きく変えるきっかけにもなりますし」
 「新たなビジネスモデルを追加することで業界は活性化し、開発競争も活発化します。塗料メーカーも仕上がりに(塗膜など)責任を持つことでブランド価値が上がる。DX化が進めばさらに活性化すると思います」

 ——アイデアが広がっていきますね。中小零細が多くを占める塗料・塗装業界で実現可能でしょうか。
 「まず重要なのは、自社だけで生きていく必要はないということ。価値観を共有できる企業と柔軟な関係を築きながら、時代に合わせて自在に変化すれば良いのです」
 「その上で、我々業界としては色に関わっている強みを再認識すべきです。7,000万色以上と言われる色は、時代や嗜好によって常にニーズが変化します。その変化を続ける多種多様な色ニーズに対し、早く、安く提供できるのは、塗料・塗装をおいて他にありません。最近は、環境問題からネガティブな印象を受けていますが、UV塗料の普及や生分解塗料が開発されれば、塗装を取り巻くネガティブな懸念も一気に払拭できます。そうなると最後の課題は、塗料消費量に集約されます。その意味で、最後の一滴までこだわる当社の『塗装道』は、塗料・塗装に関わるすべての課題を包括する価値観となっています」

◇取材後記

 佐々木氏の「塗料と塗装は連携すべき」との呼びかけに業界企業が呼応するか関心が集まる。武蔵塗料との協業に1つの形を示したが、今後も連携拡充に強い意欲を示した。
 背景にあるのは、熱負荷低減という大課題を背負った塗料側の技術革新。「塗装設備はやはり塗料の革新あって進歩する」と佐々木氏。分業から統合へ、時代の潮目が変わりつつある。

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著作:(株)コーティングメディア

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